住まいの原型を探る2009(1)

昨年より3週間ほど遅く、もはや私にとっても恒例行事となった感のある長野県の山奥に行ってきた。先週木曜日深夜、またホンダ氏と二人で難波を出発した。昨年は学生と合流することになっていた大津サービス・エリアで車から降りて、いきなり肌を刺すような寒さを感じたが、今年は2,3日前からかなりの寒波の中にあった。現地はてっきり雪になっているだろうと私は思っていた。きのうも書いたように、この時期、私は特にメランコリーがひどくなり、そんな寒さもあって、折角ホンダ氏が気を遣って誘ってくれていたけれど、内心は出かけるのが少々億劫になっていないでもなかった。だが今は、行ってきて本当によかったと心からそう思っている。
学生は、昨年とよく似たメンバー構成だった。この時期、四回生と院二回生は卒論や修論に忙しく、従って参加者は三回生と院一回生で構成され、女子は昨年と同じく2名であった。三回生が3名、院生が6名、我々老人2人を入れて合計11名が3台の車に分乗し、午前1時半頃大津サービス・エリアを出発した。
最後の急傾斜の林道で、学生の運転してきた車の一台がぬかるみでスリップし、左前輪を崖側に脱輪させてあわやのとろこで引っかかった。このあたりではよくあることらしいのだが、JAFのお出ましを願った。そんなこともあって予定よりかなり遅れて現地に到着した。心配していた雪はまったくなかった。人里からひどく離れた場所にあるので、もっと高地なのかと思っていたが、それほどでもないのだろう。
昨年と全く変わらない佇まい。私もほっとする。冬の間に屋根に積もった雪が北側だけに長く残り、その偏った重みで建物全体が山側に少し傾いている。
今年は仮眠も取らず、昼食もなし。学生たちには屋内の清掃と、前庭に延び放題になっていた雑草を刈って整理させ、その間、ホンダ先生と私は森の中に入り、今年の指導方針を相談する。昨年までは学生たちの自主決定に任せてきたが、それでは毎年、一からの出発になり、結局は似たようなことの繰り返しになってしまう。だから今年は少しこちらで後押しをしてみよう、そういう結論になった。幸い、大きな材で作られていた昨年の作品は、予想していた通り、雪の重みに耐えてほとんどそのままの形で残っていた。今年の学生たちにはそれを基本に出発させることになった。






昨年より3週間遅かったせいで紅葉もすっかり終わり、かなりの落葉が屋根に降り注いでいた。





そんな道具を使うのはもちろん初めてなのだろうが、何人かの男子学生が鎌や鍬を使って前庭に繁茂していた雑草を刈り取っていた。





今年初めて男子用の小便場が玄関前に正式に設置された。崖下に向かって尿(いばり)する。何しろここは信州なのだ。村山槐多の絵(http://images.google.co.jp/imglanding?imgurl=http://14.media.tumblr.com/tumblr_kr51thurdx1qzxv72o1_500.jpg&imgrefurl=http://globalhead.tumblr.com/&usg=__JlyofMkAhlwvNVwlIb095_anuxE%3D&h=672&w=500&sz=172&hl=ja&um=1&tbnid=cBfKRBIJt48e1M:&tbnh=138&tbnw=103&prev=/images%3Fq%3D%25E6%259D%2591%25E5%25B1%25B1%25E6%25A7%2590%25E5%25A4%259A%26ndsp%3D21%26hl%3Dja%26lr%3D%26sa%3DN%26start%3D42%26um%3D1&q=%E6%9D%91%E5%B1%B1%E6%A7%90%E5%A4%9A&ndsp=21&lr=&sa=N&start=58&um=1)(※)の気分が少し味わえる。





昨年までの学生は最小限の飲料水を用意していただけであったが、今年の学生たちはかくも大量のペットボトルを持ち込んだ。それも水だけでなく、コーラ、サイダー、ジンジャーエール、レモンティー、烏龍茶、緑茶。種類も実に多岐にわたっていた。





昨年の学生たちの労作がびくともしないでそのまま残っていた。





この日の夕食は学生たちの用意したちゃんこ鍋。とても美味しかった。特にこのようにして食べたフランクフルト・ソーセージは意外なほどにイケていた。





普段はまわりを気にしておそるおそるしか練習できなかったアルト・サックスを、ここでは存分に吹けるだろうと思って持参していた。私は強く誇示、ではなくて固辞したかったのだが、彼らのたっての願いで拙い腕前を披露させていただいた。ホンダ先生や横の学生が畏まりながらもうっとりと聴いているのは、ほんの軽くマスターできてしまっていたバッハの『無伴奏チェロソナタ』。ウソです。大ウソです。本当はトーオキーヤーマニーヒーワオーチテー、というあのメロディを息も絶えだえに。みんな呆れてうつむいてしまった。



今年の学生はこんなものまで持ち込んで、夜更けの大ロック・コンサートが開かれた。ほとんどの学生がiPhoneの使用者で、それぞれのiPodの音楽を流しながら、この学生がiPhoneのディスク・ジョッキー用アプリケーションから出るエフェクト・サウンドとミキシングをしていた。私にとっては20年後、彼らにとっては20年前といったスタイリスティックなどもかかっていて、その辺が接点となり、ならば私もと、私のiPhoneに入っているローランド・カークやマウンテンなどを聴かせてやった。その驚くべきハードさに、彼らも少し参ったようだった。フン!我々の世代の底力を甘く見てはいけないゼ。




※ 信濃デッサン館に所蔵されている。



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ローランド・カーク    エリック・クラプトンバディ・ガイジャック・ブルースらとのジャム・セッション 1969

クラプトンのこの若さ!



マウンテン     ドント・ルック・アラウンド