危機脱出

私、ブログやってます、などとエラそうなことはとてもいえないほど更新間隔が間遠になってしまっている。
この前の更新日が9月1日、なんとほぼ3ヶ月もあいてしまっていた。
この3ヶ月、昨年もこの時期はそうであったが、実はかなり難儀な日々を私は送っていた。ずっと超低空飛行のような精神状態が続き、それでもそれ以上の落下を防ぐべく、ひたすらモノ作りに私は打ち込んでいた。今もほとんど身動きができない長女のため、ある椅子を作ることに必死になっていた。
亡き母が通っていた教会の友人であった方の娘さんが、看護師をなさっているのだが、以前から長女のことで実にいろいろと心をくだいて下さっていて、その方から今年の春、音楽療法の研究会が芦屋市であるという案内を頂いた。
それに出席し、野田燎という方の講演に私は驚いた。現代日本名にし負う前衛ジャズ・ミュージシャンにして大阪芸大教授、しかも医学博士。その野田氏が実践されている療法のビデオを見せていただいた。全く何の表情も生気も感じられない老年の女性をトランポリンに座らせ、野田氏が背後からその女性の上半身を抱え、まわりの人たちの演奏する音楽に合わせて上下運動をする。野田氏は汗だくであった。
何度かそのようなことが繰り返されたのだろう、次のシーンでは、老女は見違えるように生き生きとした表情を見せ、トランポリンのまわりで歌う孫たちに笑顔で応えていた。
だが、私の娘はまだ到底トランポリンに載せてやれるというような状態ではない。第一、事故に遭ってから5つの病院を転々とし、ようやく3年半ぶりに彼女は自分の家に戻ることはできたけれど、あのような大きさのトランポリンを置くことのできるスペースは我が家にはない。そこで私は、車椅子には座らせてやることができるのだから、空気バネで上下する椅子を作ってやろうと思い立った。これだと、介護する者も後ろから立ったままでできる。ついでに野田氏と同じアルト・サックスも練習しよう。
アルミパイプ、ステンレスパイプ、ビニールパイプ、ゴム板、ゴムチューブ、グリース、エンジンオイル、毎日のようにホームセンターに通ってはこれだと思う材料を私は買い求め、作っては失敗し、まだこれでは駄目だとやり直しをし、おそらく20回はそうしたことを繰り返しただろう。つまりこれで大丈夫だと思うものが出来上がるまでに半年ほどの時間を要してしまったということだ。その間、私はメランコリーではなくまさにパラノイアになっていた。
だが、私の娘を座らせることのできる車椅子は、彼女のような状態の者を座らせることに特化して作られていた。いまだ据わらない首を優しく受け止めて固定し、固くなった下肢を支える足受けがあるからこそ彼女をそれに乗せて散歩などさせてやることができていたのだ。私の作っていたのは、娘の喜びそうな色彩とデザインの既製品を、脚を空気バネ式に付け替えただけのものであった。出来上がった椅子に娘を座らせてやることはできなかった。
9月初め、昨年もそうであったが、彼女が事故に遭った日付けの頃から、極端な不眠症に私は陥った。それまでに効いていた薬は全く効かなくなっていた。通院している神経内科医も私の訴えに心悩ませ、次々と新しい薬を処方してくれた。それでも事態は改善されたとはいえず、ただどれかの薬の副作用で、その薬を服用していた期間、食事の量は極端に減っていたはずなのに、毎日1キロずつ増えていくかのように私は肥満し始めた。子供の頃から、ゴボウ、キュウリ、センタクイタなど、あらゆる痩せてひょろひょろな体形を表すあだ名を私は頂戴していた。だからある頃まで私は太っている人が羨ましくてしようがなかった。

ところがあるとき。
お風呂に入ろうとして鏡に映った我が身を見て我が眼を疑った。私のスマートであるはずのおなかが、カエルのように白く膨らんでいた。ただでさえ小食になっていたのに、もっと小食を私は心がけなければならなくなった。が、しばらくして副作用の犯人をおそらくこれだとやっと特定することができ(数種類の睡眠用の薬を私は処方されていた)、周りの人たちをからかうために私が好んで用いていたでぶという言葉を、まさか自分が受ける羽目になるとは、という絶体絶命のピンチから辛うじて私は脱出することができた。しかも私たち家族にとって、あの忌まわしい9月初めという時期から遠ざかるにつれ、不眠症も少しずつ改善され始めた。
今日、やっとこのエントリーを書くことができたのは、だがそれだけでなく、ホンダ氏が、また例のあれに誘ってくれたからだ。その顛末については明日書きます。必ず!




出来上がった、まだ今は不要の音楽療法用空気バネ式椅子。その裏側。本当はこんな汚いところは見ては駄目。





自転車のチューブの空気入れの部分を転用し、空気圧を調整することができる。軽く押すだけでふわふわと上下する。





横からの可憐な姿。




オシャレな正面。可憐な私の娘は、いつか必ずこれに座る。





ネットで購入したアルト・サックス。メーカー名は『ジュピター』。よって同名の曲が真っ先に私のレパートリーに入った。他に、『ダニー・ボーイ』、『グリーン・スリーヴズ』、『春の日の花と輝く』など多数(!?)




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ホルスト  組曲(惑星)より(木星ジュピター)