オルレアン ルルド

8月5日のために勉強をしなければならないのに、いま22時半、今日もまだ何もやっていない。さっきまで雑用に追われていた(ような気がするだけかもしれない)。
昨年、私がピレネー越えをしたコースと同じところを辿りたいという女性から先日、日記のコメント覧を通じて連絡があった。いろいろ教えて欲しいという。私が非常にお世話になったオロロンという街の民宿、イザンベール邸(Chambre De Hôtes Izambert)にも泊る予定だという。それはこちらにとっても渡りに船というような有難い話だった。あまりに手厚く遇して下さって、何かお礼をしなければとずっと考えていて、もう一年近くになってしまっていた。女性がイザンベール邸に着く予定を教えていただいて、その直前くらいに届くよう、うどん、蕎麦、素麺などを送ろうと思っている。女性に調理の仕方(というほどのものでもないが)を、彼らに教えていただこうと思っている。イザンベール夫妻もそうだが、特にしょっちゅう彼らの家に遊びに来ていたバスク人のステファンは、信じられないほど日本のことに通暁していた。椎茸などという言葉まで知っていた。だが彼が作ってくれた日本料理(茸の炊き込みご飯や賽の目豆腐ステーキともいうべきもの)は、やはり食材があまりにも日本のものとは違いすぎた。ここは本格的なものをどうしてもご馳走したい。女性はお米とちらし寿司用の材料も持参して、料理をしてあげるといってくれている。ピエール・イザンベール氏の奥さんのセシルも、お米の炊き方がよく解らないといっていたので大喜びするだろう。多分探せばあると思うが、私がフランスで食べたお米はすべてインディカ米だった。ジャポニカ米の美味しさを彼らに教えてあげたい。
日記にも何度も書いたが、あの旅が始まってから、偶然にしてはできすぎと思うようなことが多すぎる。スペインのサングエサという街で知り合った松井夫妻は、娘が入院することになった病院のある都市の隣りの市に住んでいたということは、4日前の日記に書いた。連絡をしてきた女性は、私が最近、あることをお願いした古い友人の難波和彦氏と、古くからの知り合いであるということが後から分った。他にも、ここには書けないけれども、もっとあり得ないと思うようなことがいくつも起こった。
馬鹿馬鹿しい限りだとは思いながらも、昨年、ルルドという奇跡が起きる(という)都市に立ち寄った時、持参した500CCの水筒に“奇跡の水”を入れ、千キロ以上の道のりを持ち歩いた。だがいまもなおその水筒は、栓を一度も開けられることなく、リュックに入ったままである。しかも、ルルドについて、相当馬鹿にしたような書き方をしてしまっている。私は頭を抱え込まざるを得ない。




オルレアン駅。何とまあ間の抜けた曲線。



堂々として豪勢なオルレアンのゴシックのカテドラル。当時からいかにこの都市が大きな勢力を持っていたかということがよく解る。



道というものはすべからく直線でなければならないという信念でもあったかのように、パリの街路という街路は、20世紀も後半くらいになってから作られたと思しき外周の環状道路を除いて、ほとんどすべて直線であった。しかもそれらの直線は好き勝手な方向に向いている。19世紀、パリを含むセーヌ県の知事であったジョルジュ・オスマンが大都市改造を行うまで、パリという都市は混乱の極みにあった。だが彼のやったのも、ひたすら放射状に直線を貫く大きな道路を、既存の街路に重ね合わせるということだけであった。結果的に、位のより高い道が低い道を片っ端から寸断するという街路網が出来上がったのである。フランスの建築家が曲線(曲面)の使い方がへたくそだと私が思っていることの理由は、このことと絶対に関係があるとひそかに私は確信している。
ところがオルレアンではいろんなところでこんな道を見かけた。なぜこんな違いができたのか。それは、この都市の名前と関係がある。と、これもひそかに私は確信している。お、る、れ、あ、ん。なんとくにゃくにゃとしたこの響き。一回転半くらいしている。全然ぱりっとしていない。



新幹線よりも速いTGV。だが乗客の乗り降りの時間は新幹線の数倍はかかる。



TGV車内。新幹線より相当狭い。



スーツケースをいっぱい積んだ昔の馬車旅行の名残なのか、新幹線にはないスペースも。



ルルドの大聖堂。19世紀、ひとりの少女がマリアを見たという話から、こんな大聖堂まで出来上がった。今なら単なる妄言と退けられかねないようなことが、こんなものまで建てられるほどに、ほんの一世紀ちょっと前までは、信憑性を付与されていたのだ。逆に人間はそこまで素朴であり得たのか、あるいはたった一世紀でここまですれっからしになり得るのかということを証明する塔でもある。



フランスにだってこんなキッチュは存在する。まさに門前町といっていいこの都市は、日本の温泉地とそっくり。



だがやっぱり建築の作法はこんなにも違う。



そんなフランスが、しきりに日本に憧れているところもある。


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Santana 「Europa」