転院と再々会

転院した娘の部屋は、今までの岡山県の病院とは大違いだ。今度は4人部屋。今までは入院患者50名全員のベッドが間仕切りのないワンフロアーに収められていた。つまり、看護師全員が、全患者を常に見渡せるようになっていて、しかも実にゆったり広々としていた。その建物自体も広々とした庭に囲まれ、すべてのベッドが庭に面していた。他の病院ではちょっと考えられないような条件に恵まれていた。病院全体の面積を患者の人数で割ると、一人あたりの面積は、今度の病院は岡山県の病院の十分の一もないのではないか。今までが恵まれすぎていたのだが、あと二ヶ月とはいえあんな部屋で娘が過ごさなければならないのかと思うとこちらも辛くなる。
松井夫妻に会った。日本で会うのはこれで2度目。昨年のサンティアーゴ巡礼で、サングエーサという田舎の街のアルベルゲ(巡礼宿のようなもの)で、今日は一人で気が楽だと思っていたら、夕方6時頃、彼らが現れた。結局、その夜は我々3人だけだった。しかも全員が建築家。それだけでも確率的にはなかなかあり得ないことだと思うのだが、彼らは、娘が入院することになった隣りの市に住んでいる。娘が近くの病院に転院することになったと連絡をすると、その2,3日前、松井氏のお父さんもその病院に入院したばかりだと聞かされた。今日、聞けば、もうすでに退院されたという。
昨年、日本に帰ってきてから、すぐに彼らから連絡があり、他にも用件があったので名古屋で再会し、その夜は彼らの家に泊めてもらった。ご両親まで一緒になって凄い歓待をして下さった。家族全員が、いろんなものを手作りするのが大好きなご一家で、お父さんが地元でも有名になっている厚焼き玉子を焼いて下さったり、天ぷらを揚げて下さった。お母さんは陶芸に打ち込んでおられる。松井夫妻も、自分たちの設計した建築に、造作などで積極的に参加しておられる。
今日は、できれば一つ建築を見せていただきたいとお願いしておいた。オサレな建築なんでお恥ずかしいなどと松井氏はおっしゃった。このブログを読んでいただいていたのだ。
オサレなどからはほど遠い、実直で嫌みのない、実に気の利いた設計をされることは、改築されたご自宅に伺ってすでに分っていた。


1年半前に出来上がったお宅。類は友を呼ぶというのか、この地方にそういう方が特に多いのか、この西川さんという方も、手作りが好きな方で、建築本体に付随しているバルコニーや格子戸、ベンチなど、松井夫妻と共同で作られたという。



斜面に建てられていて、玄関は2階にある。入ったすぐの部屋がLDKになっていて、玄関上部と茶室にもなる3畳の和室上部に、それぞれはしごで上がるロフトが設けられている。



和室の間仕切りを閉じると、横の小さな開口部が茶室の躙り口(にじりぐち)になる。



ロフトに上がるはしご。



このロフトは西川さんのご主人の趣味の部屋。私は立つことができない。



一階に下りる階段。階段の下にトイレ。この写真ではわかりにくいが、階段の降りたところに窓があり、アクリル製の蹴込板(といいます)を通して、トイレにも光が差し込むようになっている。こういった当意即妙な工夫が松井夫妻の身上だ。



門灯、表札、郵便受けが収められている。これも皆さんの手作り。



西川さんのご主人手作りの田んぼ。メダカとエビまで放流されている。



松井邸の庭に自分たちで手作りされた陶芸釜の小屋。



松井邸のリビング。実に居心地がよく、洒落ている。


今日のYouTube
Taco  「Puttin on the Ritz」